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2007年 11月 10日
その四(三人会)からのつづき
牧師の家に遊びに行くと、壁には額に入った絵が飾ってあった。設計の途中の打ち合わせで、ここに絵を飾りたいので壁を窪ませてくれと頼まれたのだったが、その場所に牧師が書いた詩を筆字で書き、廻りにちょっとした絵が書き込まれていたものが飾られていた。それが会田みつおのような感じの物で、なかなか良かった。私が良い感じだと褒めると、私にも何か書いてあげようと一枚の詩が書き込まれた絵を頂いた。話を聞くと、随分若い頃からずーっと詩を書いていたそうであった。見せて上げようと言って最近書いた物を見せてくれた。そこには紛れも無く一匹の迷える子羊がいて、牧師として信仰とは何か如何に信仰するかを真摯に悩み、苦悩した痕跡が赤裸々に綴られていたが、神についてはまるで疑いの無い事のようで自分は神の子となっていた。 ある日、谷川俊太郎の詩集を出している出版社から詩集を出す事になったと言い、喜びの電話が入った。それはすごい事じゃないですかと喜ぶと、これから出版社の人と会うので紹介してあげるから池袋まで出ておいでと誘われ、出掛けて行った。地下の薄暗いお店だったが、いかにも詩人好みの雰囲気が醸し出されていて、すでに真中のテーブルには出版社の方がご夫婦で来られて座っていた。私が詩の話をあまり出来ない為に、私のホームページを見たと言うので、主に建築の話になってしまったように覚えている。その後も何度かお誘いを受けてご一緒し、色んな話を聞く事が出来た。 やがて詩集が出来て来たが、表紙の色が違うと言いとても残念がっていた。何も知らない私は、良く出来ているじゃないか誉め、単純に喜んで「これから沢山売らなければいけないね」と言うと、教会は動かしたくないんだと言った。「良いじゃないか教会で売っても・・。多くの信者さんに読んでもらえば喜んでくれると思うよ」と私が言っても、かたくなに拒絶していた。その後、韓国でも出版する準備を進めていると言っていたが‥。 そう言えば、こんな事もあった。 家が出来た始めの頃、刀を飾りたいので場所を決めて欲しいと電話があり、誰かからもらったのかと聞くと、高い金を払って買ったのだと言う。二本ありその内の一本は江戸時代の頃の刀だと言い、何人かの血を吸っているのだと聞いたと言いながら見せてくれた。 本物の刀を見るのは初めてでは無かったが、触れたもの全て切り裂き命まで奪うと言うその冷たい緊張感には、恐れよりも正直魅惑的にさえ感じられた。こんな物を振り回していた時代があった等と俄かに信じられないが、不思議と手にしてみると心が落ち着き、欲しくなる気持ちを禁じえなかった。刀は地下の牧師室に飾る方が良いと決め、いざ飾ってみるとビシャン仕上のコンクリートの荒さが工芸品としての刀をより際立たせていた。隣にある茶室のような和室4畳の中で見せてくれた牧師の小塚を分解する手付も、ザンバラ髪に着流しの姿と相まって中々様になっていた。私は、気違いに刃物などと言われないように充分注意した方が良いよ等と、冗談を言ってからかったものだった。 最近は、葉巻に凝っている様だった。何にでも凝りだすと数冊の入門書から専門書まで買いあさり、机の上に積み上げて、夜中に音楽を聴きながら読んでいるようだった。「俺も、ようやくシガーの似合う年になったよ」と言いながら、小林さんもやってみたらとタバコを止めて久しい僕に薦めるのだった。 日中はいつもサングラスを掛け、長髪を風になびかせながらハーレー・ダビットソンに乗り、髭を蓄えた顔は思いのほか優しいまなざしを持っていた彼だったが、独自の価値観を持っていて、その価値観に己を律して生きていると言う感じだった。 私が地下の牧師室を訪ねると、雑然としていないか、余分なものを置いていないかといつも気にしていて、設計者としての感想を聞いていたが、ある日私の反対を押し切って地下の中庭に滝を作ってしまい、地下が湿気るよと言っても我関せずで「どうです。良いでしょう?」と言い、滝のせせらぎを聞き入っていた。実際、中々雰囲気があり良かった。地下の中庭に滝がある住宅は、日本広と言えどもあまり例が無いかも知れない。 上の写真の左角に滝を作り、右側へ小さな川が流れているのですが、まだ写真は撮っていません。 悪しからず。この2枚の写真は、牧師のブログより転載しました。 つづく
by kobayashieiji0011
| 2007-11-10 17:08
| ある友人の思い出
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